奈良の有名寺社 10 選

東大寺は、聖武天皇の詔 (みことのり) によって建立された巨大な大仏を拝観できる寺として、国内外からの観光客で常ににぎわっています。

大仏様が安置された金堂は世界最大級の木造建築です。また「阿吽 (あうん)」の姿で向き合う南大門の金剛力士像は、名仏師の運慶・快慶によるもの。見どころがいっぱいの東大寺ですが、タイミングが合えばぜひ見ておきたいのは旧暦の 2 月に二月堂で行われる修二会 (しゅにえ) です。「お水取り」として知られるこの荒行は、奈良時代から絶えることなく続く伝統です。

春日大社と背後に広がる春日山原始林は、世界遺産「古都奈良の文化財」を構成する 8 つの遺産群のうち 2 つを占めており、うっそうとした森の中に、眼にも鮮やかな朱塗りの社殿が広がります。

春日大社の清らかな気を堪能するには、「朝拝」と呼ばれる朝のお参りに参加するのがおすすめです。かつては神職や神社職員のみが行ってましたが、平城遷都 1,300 年を記念して一般参拝者も参加できるようになりました。朝拝に参加するには、朝 9 時前に参拝所横にある直会殿 (なおらいでん) に集合します。

唐招提寺は、聖武天皇に招きに応じて戒律を伝えるために長安から来日した鑑真和上によって創建されました。唐招提寺に収められた鑑真和上像は、日本に現存する最古の肖像彫刻で、まるで生きているかのような写実的な表現が特徴的です。

唐招提寺の伽藍 (がらん) 建築は、国際都市として栄えた平城京の面影を漂わせており、なかでも金堂の柱には、ギリシャやローマの神殿の柱と同じく、中央がやや膨らんだ優美な形状 (エンタシス様式) が用いられています。

薬師寺は、天武天皇が皇后 (のちの持統天皇) の病気回復を祈って建立した寺院です。近くにある大池から若草山や春日山を背景に眺める薬師寺の美しさは、奈良を代表する風景であり、万葉集にも詠まれているほど。

薬師寺の伽藍のうち唯一現存する奈良時代の建物が、国宝指定の東塔です。三重塔ですが、各層に裳階 (もこし) と呼ばれるひさしを付けた独特の建築様式を採用しており、その美しさから、美術史家のアーネスト フェノロサによって「凍れる音楽」と評されました。

およそ 1,400 年前、亡き父・用明天皇のために聖徳太子が創建したとされる法隆寺。金堂や五重塔、回廊や中門は、世界最古の木造建築として日本初のユネスコ世界文化遺産に指定されました。

法隆寺は建築や仏教美術などの国宝が多いことでも知られており、金堂に安置された釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来をはじめ、日本屈指の仏像彫刻を鑑賞できます。境内は、金堂や五重塔などのある「西院伽藍」、夢殿や舎利殿のある「東院伽藍」、そして「大宝蔵院」と 3 つのエリアに大別され、非常に広大です。

新薬師寺は、747 年に聖武天皇の病気平癒を祈って光明皇后により創建されました。国宝に指定されている本堂は、天平建築の素朴ながらも力強い様式が印象的です。

本堂に安置された本尊の薬師如来、そしてそれを守る迫力あふれる十二神将像は、奈良時代の仏像の傑作と評されています。春日大社から南に少し歩いた住宅地にあり、静かな時間を過ごすことができる古刹です。

元興寺は、蘇我馬子が飛鳥に建立した日本最古の仏教寺院の法興寺 (飛鳥寺) が、遷都とともに平城京に移されたものです。現在の「ならまち」エリアは、以前はほぼ全域が元興寺の境内でしたが、現在はかつての僧坊の一部が残されるのみとなっています。

本堂 (極楽坊) と禅堂の屋根の一部には、約 1,300 年前の飛鳥時代の丸瓦が今でも使われています。五重小塔をはじめ国宝や重要文化財が数多く、世界遺産の一部を構成する寺院ですが、ならまち散歩の途中に立ち寄りたい、静かで心落ち着くスポットです。

興福寺は藤原家の氏寺で、かつて京都にあった山階寺がその前身です。平城京への遷都とともに現在の地に移されました。権勢を誇った藤原氏が創建した寺院にふさわしく、興福寺には多くの国宝や重要文化財が残されており、古都奈良を代表する寺院の 1 つです。

見どころの多い興福寺ですが、なかでも阿修羅像をはじめとする彫刻が収められた「国宝館」は必見です。その他、五重塔や中金堂、東金堂など、多くの見どころを有しています。

奈良時代には、南都七大寺の 1 つとして東大寺に並ぶ規模を誇った西大寺。平安遷都後には度重なる火災によって伽藍の多くを失い、現在残されている本堂、愛染堂、四王堂などは、江戸時代中期に造られたものです。

愛染堂に安置された秘仏「愛染明王坐像」で知られ、春と秋の年に 2 回、特別開扉されます。近鉄の大和西大寺駅から徒歩すぐの距離にあり、参拝・見学には非常に便利です。

法華寺は、聖武天皇の后である光明皇后が、父である藤原不比等の死後に、住み慣れた邸宅を寺院にしたのがその始まりです。奈良時代には、総国分尼寺 (にじ) として尼寺の総本山となりました。尼寺らしい清楚なたたずまいで、手入れの行き届いた華楽園には季節の花が咲き誇ります。

本尊である十一面観音菩薩立像 (国宝) は、春と秋に特別開扉されます。その他、光明皇后が困窮者を救うために設置した浴室 の「からふろ」、尼僧の手による安産や厄除けの守り犬など、歴史と格式が感じられるお寺です。