ここでご紹介するロンドンを象徴するパブは、いずれも高い人気と長年の伝統を誇っています。心に残る、時として歴史を感じさせる場所で、ドリンクを楽しみましょう。ロンドンには 3,000 軒を超えるパブがあり、そのほとんどは地元の常連客だけでなく、パブの伝統を体験してみたいという数多くの観光客によって支えられています。
中には非常に個性的なパブもあり、その豊かな歴史と伝統、常連客だった数々の著名人などの理由から、それぞれがロンドンを象徴するような存在となりました。ちょっとした幽霊の出現が話題となっているパブもあります (閉店のベルが鳴っても居座り続ける人がいたら幽霊かもしれません)。カウンターのイスに腰掛け、イギリス文化の真髄をじっくりと感じてください。
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ザ プロスペクト オブ ウィトビー
ドックランズ中心部に位置する、ウォーターフロントの歴史あるパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ プロスペクト オブ ウィトビーはテムズ川ほとりで最も古いパブであると考えられています。1520 年、ワッピングのこの地に最初のインが建造されました。この酒場が誇る石畳の床は、おそらくその当時からのものです。17 世紀には、ロンドンに住み膨大な日記を残したサミュエル ピープスがここでよくお酒を飲んでいたようですが、その時点ではすでに新しいパブに再建されていました。
当時は海賊や密輸業者などいかがわしい輩が横行していたことから、「悪魔の居酒屋」という悪名高いあだなが付けられました。彼らはここでけんかや殴り合いを繰り返していたことでしょう。歴史的風情のある店内と海洋的な雰囲気がただよう川沿いのこのパブは、現在では健全な場所として人々が集まって来ています。
所在地 : 57 Wapping Wall, London E1W 3SH, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm、日 : 12pm - 10pm
電話番号 : +44 (0)20 7481 1095
地図写真提供 Jim Linwood (CC BY 2.0) 修正済
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ザ チャーチル アームズ
鮮やかな花々に満ちた誰もが知るケンジントンのパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ チャーチル アームズの歴史は 1750 年にまでさかのぼりますが、ロンドンでの現在の知名度を得たのは比較的最近です。パブの名前は第二次世界大戦時の英国首相とその家族に由来しています。サー ウィンストン チャーチルゆかりの店としてよく語られますが、実際は彼の祖父母がこの店の常連でした。
ザ チャーチル アームズは花々にあふれるパブとして、ロンドン市民に広く知られています。その装飾は素晴らしく、英国園芸界で最も栄誉あるチェルシー フラワー ショーでの受賞経験もあるほどです。鉢やプランター、バスケットなどの数は最後に数えた時点で 200 近くにのぼり、そのコストは年間 £26,000 にも達します。幸い、自動散水システムが完備されているため、手作業での水やりは必要ないようです。
所在地 : 119 Kensington Church St, London W8 7LN, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm、日 : 12pm - 10:30pm
電話番号 : +44 (0)20 7727 4242
地図写真提供 Ewan Munro (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ザ ジョージ イン
ナショナル トラストが運営・管理する、17 世紀から続くロンドンで唯一無二のパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ ジョージ インはロンドンに現存する唯一の馬車宿です。バラ マーケットにほど近いこのパブの歴史は 17 世紀にまでさかのぼり、前身となる酒場が 1676 年に全焼したあと再建されました。馬車宿はエリザベス朝時代には数多く存在し、ウィリアム シェイクスピアなどの劇作家たちが創作の場としてよく利用していました。
ザ ジョージ インにはもう 1 つ文学的なつながりがあります。チャールズ ディケンズはここの喫茶店 (現在の「ミドル バー」) によく通っており、彼の小説「リトル ドリット」と「我らが共通の友」にも登場します。むき出しの梁と板張りの壁はこのパブの長い歴史を物語っています。しかし何と言っても、中庭での食事がこのパブ最大の魅力でしょう。
所在地 : 75 Borough High St, London SE1 1NH
営業時間 : 月 ~ 金 : 12pm - 11pm、土 : 11am - 11pm、日 : 11am - 10pm
電話番号 : +44 (0)20 7407 2056
地図写真提供 Ewan Munro (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ザ メイフラワー
かのメイフラワー号がアメリカ大陸を目指して出発した地に建つリバーサイドのパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ メイフラワーはイギリスだけでなくアメリカの郵便切手も販売しているイギリス唯一のパブです。これは、かつて停泊中の船員たちに販売していた名残が今でも続いているものです。テムズ川南岸のロザーハイズを立ち寄ったあまりにも有名な船舶にあやかり、20 世紀に入って現在の名前になりました。
1620 年、メイフラワー号のクリストファー ジョーンズ船長も新大陸に向けた記念すべき出航の前に、帆船を降りてここでビールを一杯ひっかけたかもしれません。メイフラワー号の乗客の子孫であることが証明できれば、パブ自慢のゲストブックに記帳させてもらえます。店内の頭上には、数々の古物や骨董品と一緒にメイフラワー号のモデルが飾られています。
所在地 : 117 Rotherhithe St, London SE16 4NF, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm、日 : 12pm - 10pm
電話番号 : +44 (0)20 7237 4088
地図写真提供 John Slater (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ザ テン ベルズ
ヴィクトリアンタイルが張り巡らされた歴史感あふれる壁と「切り裂きジャック」の騒乱でも知られるパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ テン ベルズは、白い尖塔が物々しくそびえ立つクライスト チャーチに並ぶ、イースト ロンドンのスピタルフィールズ エリアで最も有名なスポットの 1 つです。クライスト チャーチとザ テン ベルズは不思議な縁で結ばれています。クライスト チャーチは元々レッド ライオン ストリート付近にあり、 8 口の鐘があったことから 18 世紀に「エイト ベルズ エイルハウス」という店がこの地に誕生したことが、店の記録に記されています。1788 年には 2 口の鐘が増設され、鐘の数が全部で 10 口になったことで、パブも現在の名前に変更されました。この時点ではすでに、店の住所は現在のコマーシャル ストリートとなっていました。
のちに、この店の常連客であったメアリー ケリーとアニー チャップマンが連続殺人犯「切り裂きジャック」の最後の犠牲者になるというおぞましい事件が発生しました。今ではヴィクトリアンタイルの壁画が復元され、この界隈の日常を彩っています。
所在地 : 84 Commercial St, London E1 6LY, UK
営業時間 : 日 ~ 水 : 12pm-0am、木 ~ 土 : 12pm - 1am
電話番号 : +44 (0)20 7247 7532
地図写真提供 Ewan Munro (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ラム & フラグ
コヴェント ガーデン マーケット近くの賑やかなパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ラム & フラグは石畳の路地奥にあるロンドンの隠れ家的なパブです。1772 年にロンドン公認の酒場として、当時は「クーパーズ アームズ」という名前で営業を開始しました。店内ではしょっちゅう喧嘩が繰り広げられ、床が真っ赤に染まったため、19 世紀初頭には「血のバケツ」とも呼ばれていました。
現在の店内にはかつての気性の荒さはなく、客たちは打ち解けた雰囲気でビール片手に会話を楽しんでいます。傷だらけの床板だけが当時の面影を残しています。ワックスが何層にも重なった木材は色合い深く、真鍮のパーツを多くあしらった店内の壁にはいくつもの風刺画が飾られています。店内は混雑していることが多く、晴れた日には店の外まで客がごった返しています。
所在地 : 33 Rose St, London WC2E 9EB, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm、日 : 12pm - 10:30pm
電話番号 : +44 (0)20 7497 9504
地図写真提供 Ewan Munro (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ザ スパニヤーズ イン
地元ハムステッドの文豪たちの作品にも登場する老舗パブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ スパニヤーズ インはロンドン北部の最古のパブの 1 つで、創業はおそらく 1585 年とされています。当時はディック ターピンなどの追い剥ぎたちが身を潜めるのに利用していました。ディック ターピンの父親がこのパブの経営者であったことを考えると、これは驚くに値しません。裕福な旅行者がやって来ると不意打ちをかけて襲いかかり、金品を奪いました。
パブの名前の由来ははっきりとはしていませんが、イングランド王ジェームズ 1 世 (スコットランド王ジェームズ 6 世) の時代のスペイン大使が建物を別荘として所有していたことから来ているのかもしれません。ハムステッドといえば当時、市の中心から馬車で 2 時間の道のりでしたが、現在は地下鉄に乗って簡単に訪れることができます。暖炉に薪がくべられる冬場の夜は絶対に訪れてみる価値があります。
所在地 : Spaniards Rd, London NW3 7JJ, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 10am - 11pm、日 : 10am - 10:30pm
電話番号 : +44 (0)20 8731 8406
地図写真提供 Martin Addison (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ザ ホーリー ブッシュ
幽霊が出るとの噂もある、ハムステッドの緑豊かな地に建つ人気パブ
- 食事
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
閑静な高級住宅街として知られるハムステッドに位置し、エレガントな佇まいを見せているその建物は、現在でこそ第 2 級指定建築物にも指定され、人々が集う場となっていますが、パブとして創業する 1807 年までは個人宅でした。革張りのソファーと華麗なカーテン、磨き上げられた床板に敷かれた絨毯とシャンデリアの店内は、訪れた人々を異空間に誘います。寒い日には鋳鉄製の暖炉に火が入れられ、一層贅沢な雰囲気が演出されます。
ザ ホーリー ブッシュでは優れたワインを楽しめ、リアル エールも幅広く取りそろえられています。料理も絶品ですが、注文はカウンターで行った方がいいでしょう。暗い色のスカートに白くて丈の長いエプロンをつけた女性が店内を給仕していたら、それはこの店に住み着いている幽霊かもしれません。
所在地 : 22 Holly Mount, London NW3 6SG, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm、日 : 12pm - 10:30pm
電話番号 : +44 (0)20 7435 2892
地図写真提供 Ewan Munro (CC BY-SA 2.0) 修正済
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イェ オールド チェシャー チーズ
『オウムのポリー』の名前の由来ともなったフリート ストリートの老舗パブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
イェ オールド チェシャー チーズは、フリート ストリート沿いの数百年続くパブです。店先に飾られた鉄のランタンはこのパブのもう 1 つの看板でもあります。また、店内に置かれたクーパーズの樽は、ビールグラスを乗せるのにぴったりの高さです。イェ オールド チェシャー チーズは 1538 年からこの地で営業していますが、現在の建物はロンドン大火の後に再建されたものです。地下貯蔵室はさらに古くからあるとされています。
マーク トウェインやサー アーサー コナン ドイルもこの店の常連でしたが、人々の記憶に残っているのは何と言っても「ポリー」という名前のオームでしょう。ポリーは口汚くののしる言葉を吐き散らし、「ポンッ」とコルクを抜く音に続けて「トクン、トクン、トクン」とワインを注ぐ音のまねをして、40 年の生涯の間客を楽しませました。1926 年に亡くなったあと、その体は剥製として残されました。ポリーの剥製はカウンター上のケージの中に置かれています。
所在地 : 145 Fleet St, London EC4A 2BU, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm (日曜定休)
電話番号 : +44 (0)20 7353 6170
地図写真提供 Images George Rex (CC BY-SA 2.0) 修正済
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ザ スター タバーン
石畳の路地にひっそりと建つ上品で静かなパブ
- 歴史
- ナイトライフ
- 写真
ザ スター タバーンは、暖炉上に飾られた鏡とその周りを囲む壁一面の本棚が特徴的な、ロンドンのベルグレービアに古くからあるパブです。クリスタルガラスを贅沢に使用したシャンデリアが豪華な雰囲気を醸し出しており、かつてはダイアナ ドースやピーター オトゥールなどの映画スターたちがこぞって訪れていました。しかし一方で、ピーター スコットが £200,000 のネックレスをソフィア ローレンから盗んだあと、その悪事をこの店の客の前で発表するといういかがわしい出来事の現場ともなりました。
また、イギリス史上最悪の強盗事件である「1963年の大列車強盗」の計画もこの店で考案されました。黒幕のブルース レイノルズは派手なアストン マーティンでよくこの店を訪れ、手下たちに襲撃の段取りを伝えていましたが、陰謀が事前に発覚することはありませんでした。
所在地 : 6 Belgrave Mews W, London SW1X 8HT, UK
営業時間 : 月 ~ 土 : 12pm - 11pm、日 : 12pm - 9pm
電話番号 : +44 (0)20 7235 3019
地図写真提供 Edwardx (CC BY-SA 3.0) 修正済